日々のこと 43
瞑想の場にて
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 静かな夜である。
まず、第一にこの部屋には館外に通じる電話がない。
そして携帯電話は圏外である。
物音といえば、午後降り出した雨がまだ地面をたたいているだけだ。
つまり、テレビやラジオなどの放送受信機もない。
ついでに言えば新聞も館内にはない。
冷房装置は床下を流れている水である。

午後九時。
この時間のこの建物内は、静寂にみちている。
酒類はここにはない。
煙草もない。
おまけにコーヒーさえない。ぼくにはこれがコタエル。
 数時間、車を運転してここに到着したのだが、
そのことさえ、すでに遠い思い出のようである。
今日から、僕はここで瞑想三昧に明け暮れるのである。
この組織の決まりがあるので、詳しく書けないが、
ようするに心身共に、日々の酷使から解き放たれて、
休息がとれるのである。
 
 単純な意味あいでの休息が瞑想の目的のすべてではないけれど、
普段の疲労の度が過ぎていると、ただただ眠っていたりする場合もある。
命アッテノモノダネ、に近い感覚と思っていただきたい。
現在この国、いやこの星に住む殆どの人が、過度の刺激の中に浸っているのだから、
それから何らかの影響を受けていないはずはないだろう。
例外は考えにくい。
まあ、過度というレベルの考え方も様々まではあるけれど。

ないほうがいいもの、
なくてもいいもの、
なくても困らないもの、
あっても困らないもの、
あってもいいもの、
あったほうがいいもの、
まで、

 もの(こと、に置き換えてもいい)なんて、
分類したうち、終わりからせいぜい二つまでが必要なだけだ。
あとはなるべく処分するにかぎる。
ちょっと待て。
なんて、言い切っていいのか。

 世が世なら、音楽なんて真っ先に処分の対象だろう。
筆者の場合は、ヨじゃなくてもと誰か考えましたね。

 いやいや、無駄がない人生なんて、などと、
突然、弁護派に寝がえっったりするのがミュージシャンの一部にいる。
僕か。
 ここで真顔で登場するのが、ピッタ体質の、向上心旺盛な人たちだ。
この半可通な表現を、関係者が見ないことを祈っているのだけれど、目を瞑って・・・
などと書いたら、こんなケースで使う言葉ではないと、
これもそちらの関係者が見たら・・・

 つまり彼らの意見は、音楽の質の向上を目差しなさい、
そういう音楽は残してあげましょう、というものだろう。
そのとおりである、とここはしっかりうなずいておきましょう。

 言っておくけれど、音楽にとって“質”とはなんですか、
などと質問(チョーハツ)するのは、づぇったい我慢するべきである。
こんな難問に一言でこたえられる人間がいるわけがないから、というのは甘い。
いる。
一言が、次々出てくる。
じゃ一言じゃないんじゃないの?というのも甘い。
一言というものは、延々と続くこともあるのだ、実際。

 文明論のお面をかぶった只のおせっかい、
宇宙論の着グルミの只のイヤガラセまで、聞くことになってもいいのか。
(だから、ピッタとかそういうの忘れてくれますか、スミマセン)
アンタなんかいなくてもいいよ、ほんとは、
と言うことが下敷きになっていることもあるぐらいだ。
フォーク歌手にもこのタイプいたりして・・・
歌っている時間より長かったりして・・・
 さて、現在、僕の現実は静寂に満ちている。
実はこんなにヤッキになってものを言うような環境ではない。
メモ用紙が、かさかさいっているのだ。
そんなことに耳がいくぐらいしずかなのだ。

 話は元に戻るけれど、現在の日本でこの環境を得るのは至難の業だろう。
しかし、実際にここにはあるのだ。
おまけに、明日はこの環境の中での、僕の例年のコンサートをしてもらえる。
ありがたい話なのだ。
個室なのでとがめられないけれど、
こうして文章を書くこと自体が、ここではいいことではない。

 午後十時である。
もう布団の中にいなさいという時間だ。
しかし俗社会でばたばたしている僕にはとても出来ない。
しかたがないので、明後日ここのホールで歌う歌の、おさらいでもしよう。
あっ、音はたてられないのだった。

どうしよう。
瞑想でもしよう。
と、こうなるのである。
罠にはまったのかな。
ステキな罠だな。
及川恒平 ヴェーダの森那須 音楽会  2004年7月18日《土》pm7:30〜8:30
コンサート・プログラム

1  雨が空から降れば
2  私の家
3  ゆりかごの歌〜平原にて
4  天の川へ
5  望郷の歌
6  遥かな愛
7  ジェルソミーナのテーマ
8  ガラスの言葉
9  金属メルヘン
10  あめのことば
11  星の肌
12  靴を繕う

アンコール  引き潮


コンサート会場
マハリシ総合研究所 那須センターと言う場所に毎夏、よんでいただき歌っています。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、この集まりは「超越瞑想」という独自の瞑想法を実践しています。

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