日々のこと59

もう行かない街

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   新興住宅街での日々は、
  富士山が見えるという弁解から始まった。
  もうただ都心にいられなかったのだが。
  僕だけではなく、ここの街にやってきた誰もが
  なんらかの弁解が必要だっただろう。
 




 
   空は広い。
  でも、それは気恥ずかしくもあった。
  なぜ気恥ずかしいのか。





   電信柱のない街を作るという話があった。
  広い庭を義務づけるということでもあった。
  ここだけは、そうするという傲慢。
  ここだけの物語でもなく。





 
   数年前、
  ヒバリはせっせと空を目指しては落下することを楽しんでいた。
  岩場と勘違いしたセキレイがやってくるようになった。





 
   宗教の勧誘の為には、
  早朝から付近の公園に集まる男女の、
  みょうにフォーマルな服装の集団を、見かける朝。





  
   県内でも平均年齢の低い地域。
  かつて、日本全体がここよりも低かった。






    そう遠くない日に、懐かしさだけがぽとりと取り残されている。
   街全体が玩具箱。

   こうして、残そうとしている僕。

 

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