夢眠のフォーク畑 002 |
酒席にて
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フォーク・ソングが好きだ、と30年来、言い続けている。
隣席の話し相手が一定の年齢幅に収まっている場合には、
「実は私も……」なぞとなりやすいのだが、
父娘ほど歳が離れていると「フォークってなに?」と訊かれたりもする。
そこで、おじさんは若い娘が知っていそうな歌手を思い巡らす。
「うーんと、ゆず、山崎まさよし(いかん、もっとこっち側にひきずり込まなくては)、
アルフィー、(そうだ、この頃TVに出てるから)吉田拓郎、泉谷しげる、堀内孝雄……」。
無駄だったようだ。
そりゃ、そうだ。現状しか知らなければ、
アルフィーとべーやんが同じ音楽ジャンル出身だなんて思えないだろう。
もっと混乱させたければ、高田渡、三上寛という布陣も控えているし、
六文銭だってひけはとるまい。
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だが、もし、質問した娘が本気(マジ)なら、「ちょっと長くなるよ」と断って、こんな説明をする。
「アメリカにピート・シーガーっていう歌手がいてね……」で、始まり、
「……つまり、フォーク・ソングっていうのは生活の中から生まれた音楽なんだ」で、終わる。
この間、30分ないし60分。
唇を湿らせるバーボン・ソーダの4、5杯と5、6本のタバコで足りる。
所要時間の幅の広さは、こんな例を加えるかどうかで左右される。
「正岡子規の提唱した写生文ってのがあるだろ?
言文一致でもいいや。(中略)文章は誰にでも書ける。
その当たり前のことが、文学と生活を近づけたんだよ」。
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・・・という話をしていたら、「その話、全部聞きたい」という男が現れた。
だから、しつこく書いてるでしょ。
隣席の話し相手は「娘」なんだってば。
その昔、音楽を作る側には専門家しかいなかった。
それなりの教育を受けた者か、かなりの才能に恵まれた者、
とにかく、エリート達だけのものだった。
市井の庶民はありがたく推し頂くしかなかったのだ。
でもそうじゃないんだよ、とフォーク・ソングが教えてくれた。
だって、さらに昔の民謡なんか別に専門家が作ったわけじゃない、
だから、お祖父ちゃんお祖母ちゃんの歌っていた音楽も見直してみましょうよ。
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それが、
20世紀ポピュラー音楽界の奇跡とも言われる「フォーク・リバイバル」のきっかけだ。
単なる流行ではなく、それはもう文化運動と言っていい。
この運動で発掘され、あるいは新たに化粧を施された歌が、
いつしか日本にも伝わった。
これに跳びついた若者の中に青年・小室等がいた。
で、日本のフォークが始まる……。
ここから先は愚痴めいてくるから、素面じゃなあ……。
バーボンちょうだい、ダブルのロックで……。
*文中、巨匠・小室さんを含めて呼び捨てにしておりますが、
基本方針として今後は敬称略とさせていただきます。
ご了承のほどを
夢眠
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