面影橋から題字


歌のはなし 曲名 公表作品 作詞者 作曲者
019 面影橋から 『六文銭メモリアル』
『引き潮』ほか
田中信彦・
及川恒平
及川恒平 


KEY=G
この曲はギターのコードフォームとみっせつな関係があるので、少々の事情ではKEYを変えるわけに行かない。


(前奏)   G      ≒   

G        Em      ≒         ≒
面影橋   から       天満橋  
G        Em      ≒         ≒
天満橋  から       日影橋

Bm           G 
季節はずれの     風にのり
Bm            Em         Bm 
季節はずれの     赤とんぼ

G        Em     ≒         ≒
流してあげよか       大淀に
G          Em     ≒         ≒
切って捨てよか   大淀に    

(間奏)  Em    Bm    Em    Bm
      Em    Am     Em    ≒         

G        Em     ≒         ≒
いにしえ坂  から    わらべ坂
G        Em     ≒         ≒
わらべ坂  から     五番坂

Bm           G 
春はどこから    来るかしら
Bm          Em         Bm 
風に吹かれて    来るかしら

G       Em     ≒         ≒
めぐり めぐる     思い出に
G       Em      ≒        ≒
歌を忘れた  影法師




 天満橋は大阪。
面影橋の所在地は知らなかった。
でも曲は書ける。
 
 ところで日影橋は劇作家の頭の中だ。
後日ありもしない「全国の日影橋を探そう」というキャンペーンをはったのは、
某ベルウッド・レコードです。


 当時ぼくは大学の演劇部に籍があり、先輩の新劇団には座付き作曲者として加わっていた。
後に小室等と出会うことになるほかの劇団では、劇中で歌ってもいた。
 最初『面影橋から』は、大塩平八郎の乱を題材の芝居で役者が歌った。
夢と現実の狭間を表現したもので、
実際の場所など知らなくてもなんの不都合もなかったというのが作曲家らしい言い分だ。
 か、どうか。
 六文銭で『面影橋から』を歌った訳は、きっとほかに曲がなかったとかそんなところだ。
思い出してもしかたがない。
おまけに最初はワンコーラスしかなく1分強で終った。           
 ところがそのありあわせの1分強が、どうも同世代の聴衆の心をくすぐったらしい。
 ウケルためになんか歌っていないはずのぼくらもそれには敏感だった。
 正直モノだ。
 あわてて2番の歌詞を書くことにしたのは言うまでもない。
 日本文学科の学生というそれだけの理由で作詞者はぼくであった。
彫刻科や化学科のほうがもしかしたらという発展的な思考には
ついにいたらなかった。
 2番の歌詞はとりあえずの語呂あわせだから、実は録音によりしっかり違っている。
おまけにタイトルも『思影橋から』だったりもするし、『から』がなかったりもする。
誰のせいかは微妙なところ。
その場かぎりを歌うこと以外に、記録としてとどめる発想などのなかった頃には、よくある話だ。
 と、思う。


 だから六文銭のレパートリーは、なんとかの歌とかアタマの歌詞そのままとか、
そりゃそうだけどのパターンがじつに多い。
聴かれて苦しまぎれに団長の小室等がそう答えるのだから、
ぼくら団員がそうするのは無理はない。
 と、思う。
 
 さて『面影橋から』はレコードとしてどれぐらい売れたのかぼくは知らない。
つまり知らされるようなシロモノではなかったのだ。
ところが不思議なことにこの歌は売れなかった歌としては、意外なほど知られている。
 だからぼくもこれを書いている。
 
         

それにしても悔やまれるのは、"全国の日影橋さがし"キャンペーンだ。
あったからといってどうなるのだ。
 もしどこか片田舎にやっと見つけたとして、その橋のたもとで歌ったからといってどうなるのだ。
 きっちり思いつきだけ。戦略ミス以外のなんなのだ。
 すっきりした。
 
 しかし、このてのカナシイ歌は、フォークというジャンルには結構あるような気がする。
 ここにきて楽団『六文銭』の演奏がおもしろい。
この歌を歌う機会もふえるだろう。      
 
 『面影橋から』現象は、
マスメディアが掴まえきれなかった流行がはばをきかしていた時代の、おとぎばなしだ。

                        (2002年、東海地方の新聞に書いたものを転載)




   


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