歌う川

歌のはなし 曲名 公表作品 元詩(短歌) 作詞・作曲
073 歌う川 2005/8/2イギリス館
糸田ともよ 及川恒平
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     C△       Dm7       G7        C
いたず  らに    川 らを   うずめ てる    小い しを

   C△        Dm7     G7        C
拾っ ては  投げて みる  みず べの  あたり へ

    F    /  C       F      /  C
月に  向って風  が   少し  吹いて いまし  た

      C ・  Dm / G7    C
そんな  まよな か   で  し  た


    C△      Dm7       G7        C
つま  しい  つぶ  ても   水を  打ち  続け   れば

     C△       Dm7     G7        C
ささや  かな メロディ ーを  奏  でる で しょ  う

    F    /  C       F      /  C
月に  向って風  が   少し  吹いて いまし  た

      C ・  Dm / G7    C
そんな  まよな か   で  し  た


     C△       Dm7      G7        C
もしか わの  すべ  てが  歌い だす   其のと きは 

    C△     Dm7      G7         C
わた しも   誰 かに    届く ので  しょ う か

 
    F    /  C       F      /  C
月に  向って風  が   少し  吹いて いまし  た

      C ・  Dm / G7    C
そんな  まよな か   で  し  た


    C△      Dm7      G7       C
やぶ れて  ただ よう   船で 待つ    人 には

    C△       Dm7      G7        C
届い ても  聞こえ ない   歌も ある で しょ  う

    F    /  C       F      /  C
月に  向って風  が   少し  吹いて いまし  た

      C ・  Dm / G7    C
そんな  まよな か   で  し  た


  六月、札幌に行った。
この地で僕は「水の列車」という歌集とめぐりあった。
糸田ともよという著者を僕は知らなかった。
というより、短歌のことを、よく知らない。
ただ、知らないけれど、興味がある。
なんせ、穂村弘さんの添削つき講座に、だいたんにも潜入しているほどなのだ。
 ただし、興味があることと、知っている、というのは別だ。

 この作品集を教えてくれた歌人に、感激のあまり、
「水の列車」は、短歌の王道を行くものですね、と言ったのは僕だ。
彼女は、この大げさなものいいに、驚きながらも、うなづいていた。
ちょっとうれしそうにも見えた。
 ずにのった僕は、なんだか、短歌というもののオーソドックスな表現を見るおもいです、
と言った。
 もう、彼女はうなづかなかった。
困ったように、糸田さんはかつて詩も書かれていました、とひとりごとみたいに言った。

 んなわけで、独走はつづいた。
七月末、また札幌に行ったおり、糸田さんに会うことができた。
そのときは、すでに僕は「水の列車」の愛読者になっていて、
ファンとしてお目にかかったのだった。
 その席で、僕は糸田作品をSONGにしたいと、申しでた。
勢いにたじたじとなったともよさんは、つい
「ええ・・・」と言った。
つい、であろうがなかろうが、ええ、だった。
もう、その場で僕の頭の中では、つぎつぎに糸田作品が点滅しだした。、
歌になりたがっている、と解釈したのは僕だ。
  その日から、僕の歌集「水の列車」への攻勢がつづいている。
今回、載せた歌詞カードは、八月の横浜・イギリス館公演で、歌ったものである。
つまり、もう書いてしまったのだ。
実は、その公演で、もう一曲、糸田作品を歌っている。
いずれ「歌のはなし」のページで、見ていただくことになると思う。

 さて、ここから歌ができていった課程の簡単な説明である。

 僕は、当初、糸田作品をそのままSONGにすることを前提にチャレンジした。
まず、気になる短歌をチェックして、ノートに書きとった。
三百首ほどの短歌かから、数十首を、とにもかくにも選び出した。
そうして、それらを眺める日々が始まった。
 僕が、糸田作品から強く喚起されたものは、実は風景だった。
なかなか、言葉を音に定着する作業は、はかどらず、
作品を読んでは、白昼夢にひたるような日々であった。

 そんな中、糸田さんにオウカガイをたてた。
「水の列車」にある作品を、そのまま音符にしていくのではなく、
糸田ワールドとして、歌に置き換えていいかどうか、であった。
彼女の内心はわからない。
しかし、それを許可してもらえて、僕のSONG作りは、ようやく具体的に始まった。
あらたなる飛礫呑みのみ歌う川 月の破船で待ってる人へ
 歌集 「水の列車」のラストの歌である。
このページの都合上横書きにしてあるけれど、むろん縦書きである。
この歌が、ラストのものだからという理由はまるでない。
僕はこの歌のおりなす風景に見とれたのだった。
たぶん、かなりの時間が、ただ虚空をにらんだままで通り過ぎていったと思う。
われにかえった僕は、見ていた風景を、歌集の余白に書き取る作業を始めた。

 以後、この歌集は、どのぺーじも、
僕の書き込みで埋められていくのだけれど、ご安心ください。
もう一冊、トコノマ用のを所有しております。

 以後の記述は、ほんとうは、公開すべきものではないような気もする。
完成したものを、それのみをライブなり、録音盤なりで発表すればいいのだろう。
だから、そうとう恥ずべき所業だとの、自覚もある。
だけど・・・、書き続けてしまう。
 このところ「街と飛行船」という歌の歌詞の変遷をおいかけたりもしているし、
もともとフォークソングなんて、他の分野の歌曲とは違い、
移り変わっていくのが、ふつーのことなのだろう、と、ばかり。

 ついでに言えば、どうも「夏・二人で」の歌詞の変化にも気がつかれてしまったようだし、
もっと、ついでに言えば、「面影橋から」なんて、2コーラス目はなかったし、
その2コーラス目だって、歌詞が数回で変わったのだ!
開き直ってドースル・・・。」

 そうして、さらに、もう、さらに書いてしまうと、
この「歌う川」にしたって、八月イギリス館で歌ったものと、すでにちがうのであーる。
 だから、「歌う川」という作品が、どんな課程で書かれていったかを、白状するのなんて、
たいしたことじゃないぞ。
 
 あらたなる飛礫呑みのみ歌う川 月の破船で待ってる人へ
 
まず、この作品を読んでした最初の作業は、以下。
糸田作品を、カイドクするにあたり、あらかじめ購入していた電子辞書により、
「飛礫」は、なんて読むの?と、調べることだった。
 お教えしましょう、つ・ぶ・て、と読みます。
あれっ、知ってましたか、しつれい。

 どうやら音読できたので、つぎはカイシャク。

「呑みのみ」とひらがなと漢字で繰り返しているのはなんでかなあ。
待ってる人、って必ずしも誰かではなく自分の場合もあるのかなあ。
月の破船、ってもう月に不時着しちゃっているのかなあ。
あらたなる飛礫、ってつぎつぎに生まれてきているということかなあ。
など、など、際限がない。

 そうして、こんなつじつまあわせとは別に、風景が生まれては、
それまでの風景に、重なっていく繰りかえし。
ともかく、言葉に置き換えた。

まだ新しい石ころを
拾い集めて投げている
川に向って投げている
真夜中のことでありました

かわらにあった石ころが
つぶてとなって水を打つ
川面が歌になるようで
やめられないのでありました

壊れた船でまつ人に
果たして歌の届くやら
月にむかって風が吹く
真夜中のことでありました

              2005/8及川
 なんだか、のんびりしたものになっている。
こののんびりさ加減は、僕のウリかもしれないが、
糸田ともよ作品のシャープさとは、あまりにもかけはなれていたようだ。

 歌詞カードとしてこのページのあたまにあるものになるまで、
こんな作業が数日つづいている。
では、なにが決め手になったのかといえば、それはメロディである。

いたずらにー♪

と旋律が出てきたとき、もうこれで動かすことはないだろうと思えた。
だから、ここで実際に聞いてもらえなければ、これは無駄な文章なのかもしれない。
いずれ、こんなページでても音を聞いてもらえるようにゼンショしますっ。
真夜中、このフレーズを譜面に書き取り、一人でかんぱいしたのだった。

 しかーし。
書いたように、歌詞は日々移ろう、なんて、言ってる場合なのだ。
イギリス館ライブからも変わってしまったほどなのだから。
今後も、おいおい変わっていくでしょう。
オイオイ・・・?
いたず らに 川原を うずめてる 小石を
拾っては投げてみる  水辺のあたりへ

月に 向って風が少し 吹いていました
そんな真夜中でした


つましい 飛礫も 水を打ち 続ければ
ささやかなメロディ ーを奏でるでしょう

月に 向って風が少し 吹いていました
そんな真夜中でした


もし川の すべてが 歌いだす  そのときは 
わたしも誰かに届くのでしょうか

月に 向って風が少し 吹いて いました
そんな真夜中でした


やぶれて ただよう   船で待つ 人には
届いても  聞こえない 歌もあるでしょう

月に 向って風が少し 吹いていました
そんな真夜中でした

                   2005/8及川
  いちおう完成した?歌詞のみを上に書いてみた。

水辺のあたり、というたるーい言い回しはなんとかしなくてはね。

各コーラスの一行目は、歌の都合上、4,5音節にしたいのです。

“登場人物”をあるていど、特定できるほうがシンプルかな。

各コーラスの最初の言葉は、ちょっとブツカる音があるほうがいいかな。
これはこれで、あると思っていもいるのデス。

と、これ誰に飛ばしている暗号だと思う?
実は糸田さんへ。
これ読んでくれていたらうれしい。
おちえはいしゃく。

実は、糸田さんとは、スイメンカでちよっと作業が進行している。
まだまだ、むずかしい箇所もあるのだけれど、進んでいるのは確かだ。
イギリス館で歌った、もうひとつの糸田ワールド「地下書店」仮題、という歌についても、
なるべく早期に、ここに書きたいし、つぎの作品にもとりかかりたい。

この「歌う川」については、随時書き加えていこうと思う。
参考資料

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