空の扉

歌のはなし 曲名 公表作品 作詞者 作曲者
083 空の扉
地下書店
糸田ともよ 及川恒平
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   Am    Dm     Am ÷  Am       Dm     Am    ÷
迷い込む  ほの暗い道      一人切りで 真っ直行けば

   Am    ÷   C    ÷    Dm   ÷  Em   Am  ÷
あかい  露店に  金物 屋    劇場  病院   時計 店

   Am    Dm  Am  ÷  Am       Dm     Am     ÷
店じまい  占い師        地下の水音 聴く  少 年

   Am   ÷   C   ÷       Dm    ÷  Em      Am  ÷
不意の 楽隊  笛 鳴らし   生きてる ころの  ゆう子ちゃん

    E7   ÷      E7   ÷    E7    Am  Am/E7   Am
みんなみんな   みんなみんな    淡い 朱色の  後ろ 姿

   E7      ÷      Am      ÷
ああ ああああ


Am    Dm Am ÷  Am Dm  Am ÷
迷い込む ほの暗い道    突き当り 角を曲がると

Am ÷  C ÷    Dm ÷ Em Am ÷
いつものように 袋小 路 見知らぬ家 の  狭い庭

Am     Dm Am ÷  Am   Dm Am ÷
また会った 針金 の  しっぽを曲げて 笑う 犬

Am ÷   C  ÷  Dm  ÷   Em Am ÷
テレビの明かり 漏れる窓 どこもかしこも よその 家

E7 ÷ E7 ÷    E7  Am Am/E7 Am
みんなみんな  みんなみんな 褪せた 横縞の カーテ ン

E7 ÷   Am   ÷
ああ ああああ


Am    Dm Am ÷  Am Dm  Am ÷
迷い込む ほの暗い道  虫が鳴いて 夜は深まり

Am ÷ C ÷  Dm ÷ Em  Am ÷
点滅している 常夜 燈 麻酔のような  影の 霧

Am   Dm Am ÷  Am Dm  Am  ÷
後ろ姿 若い 男     迷彩服が 森に なり

Am  ÷   C   ÷ Dm ÷   Em  Am ÷
樹々は まっすぐ 伸びていく 空の扉を  開けなさい

E7 ÷ E7 ÷    E7 Am Am/E7 Am
みんなみんな  みんなみんな 懐しい 顔が 振り返る

E7 ÷   Am   ÷
ああ ああああ


 C Cmaj7 F G7   C   Em
空の 扉 を  開け なさい 空の 扉 を
 
「空の扉」を読んだとき、この街の風景は、
ぼく自身の書いた「歌よ」にある風景とかさなると思った。

両方をくらべると、
視力の違い(ぼくの左目は視力0.1)によるところの、
ものの輪郭の鮮明度は、如何ともしがたいが、
似ていると感じてはもらえるのではないか。




すなわち、生きてるころのゆうこちゃんとは、
駈け去った少女であり、
劇場などのある、その街の中心部に、寺院がある。

旅芸人たちとは、
たまに街を訪れる異邦人であり、
不意の楽隊とは、
やはり異邦人の、街に潜んでいる霊のようなもの。




糸田ともよの街とぼくの街がちがうとすれば、
観察する者のポジションか。

「空の扉」を読む人に、
糸田の場合、その姿は見えない。
つまり筆者は、読者と同じ視点にたつように、
ふるまっている。

そして、ぼくの「歌よ」では、、
家の中にいて、窓越しに外の街並みをのぞきみている。




読者と同じ視点に、と言いきらなかったのは、
以下の理由だ。

「空の扉」の、姿の見えない書き手は、
実際には、自在に街中をさまようこともしているからだ。

まるで、
読者と同じ視点にたって(いるように)振る舞っているので、
たとえば、
街のさまざまな事象に、異常接近を試みても、
決して正体をみやぶられない。
しかも、目の前のものやひとに直接触れさえしている。

「空の扉」という詩が、
不思議なリアリティをともなうのは、この理由による。




いっぽう、「歌よ」のぼくは、
家の中から眺めているのを、白状することで、
読む者にも、ひといきつくことを赦そうとする。
もちろん、ひといきついていたいのは、
ほんとうは自分が、だからだけれど。

以上のような、決定的な相違点を認めた上で、
ぼくは、ふたつの歌にある街が、
同じであると、言いつのっている。
 
「歌よ」

1  鏡の中の 手
  
  窓 不 意打つ 青空
  
  跣の 少女が 
  
  駆け足で 道を曲がる

  
  常なる日々よ  心につもれ
  
  えまいと なって 目覚めよ

2 陽射しの中の 絵
  
  秋 知らない店先
  
   大きな鞄 
  
   旅の役者たちが通る

  
  常なる日々よ  心につもれ
  
  えまいと なって 目覚めよ

3  時計を見ない日 
 
   午後ぽとりとはなびら
  
   風の日    寺院の廊下 のその先
   
   歌よ   歌よ   歌よ   歌よ

   
  常なる日々よ  心につもれ
   
  えまいと なって 目覚めよ
 
参考「歌のはなし8
 
2010年「地下書店」及川恒平ソロ CD収録

関連ページ  http://melharp.asablo.jp/blog/
現代詩手帖 平成二十二年五月号 田中綾著

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